大沢在昌 屍蘭 新宿鮫V







新宿鮫シリーズ第3弾です。
12作とは内容が結構異なります。

ハードボイルドシリーズですが、この話ではハードボイルドらしさは少し影をひそめます。
特に第
2作「毒猿」と比べると、ハードボイルドらしさはあまりありません。


しかしその分、話の展開で読ませます。
ハードボイルドシリーズなので、この話でも多くの人が亡くなります。


ハードボイルドらしさがあまりないのにはしっかりとした理由があります。
読んで行けば分かります。



浜倉という新宿のコールガールの元締めが殺されます。
浜倉は鮫島と面識があり、亡くなる前に鮫島に会っています。

浜倉は死因がよく分からない亡くなり方をします。
この死因不明というのが大事になります。

浜倉以外にも裏社会の人間が多く出てきます。


釜石クリニックという産婦人科があります。
この釜石クリニックと浜倉、そして他の人間が繋がってきます。

釜石クリニックは表の産婦人科ではありません。
裏社会のものです。


釜石クリニックで何が行われているのか、ということも大事になりますが、そこに関わっている人間が重要となります。


この釜石クリニックは、釜石義朗(よしろう)が院長なのですが、経営者は違います。
看護婦(今の看護師)が3人しかおらず、合計4人の小さな産婦人科です。

この産婦人科で働くベテランの看護婦、島岡ふみ枝が事件に大きく関わってきます。
また、島岡ふみ枝の他に、藤崎綾香、須藤あかねという女性が出てきます。


この話は女性中心なのです。



ハードボイルドらしさが欠けるのですが、それは女性が中心だからです。
2作とは全く違う展開となっています。


綾香、あかねの2人はいとこで、この2人の過去と島岡ふみ枝が繋がります。
特に綾香とふみ枝の繋がりはかなり強いです。


綾香はエステを経営する女性実業家で、お金も相当持っています。
ふみ枝は看護婦でそれほどお金を持っていません。


またあかねは実は子供の頃の事故で寝たきりです。
植物人間になってしまったのです。

22年間もあかねは眠ったままです。


あかねは高級な病院に入院しており、その病室は蘭で埋め尽くされています。
綾香が常に蘭を病室に送っているのです。



植物人間になったあかねと綾香の過去がとても大事です。
話が進むに連れ、この2人の過去が分かります。

この2人に一体何があったのか、またふみ枝がどう絡んだのかも大事になるので、しっかりと読んで下さい。




話は実質、綾香とふみ枝が中心です。
周りに男が何人か出てきますが、脇役に過ぎません。


この話はあくまでも女性中心です。


女性中心なのでハードボイルドらしさがないのですが、しかし女性中心のハードボイルドになっていると言えます。

ハードボイルドなので、多くの人が亡くなりますが、その亡くなり方、つまり殺し方が女性らしいのです。
女性らしく殺すとはおかしいですが、力技ではない、ということになります。



2作の「毒猿」とは全く正反対の内容です。


鮫島がこの事件に当然絡んできますが、鮫島は鮫島で危機に立たされます。
警察を辞職するかどうか、という瀬戸際まで追い込まれてしまいます。



鮫島は警視庁、新宿署にとって扱いにくい存在です。
その鮫島が事件に巻き込まれ、被疑者のような扱いを受けてしまいます。

しかし鮫島は自ら辞めることはしません。
鮫島は追い込まれますが、簡単には屈しないのです。


この話は、綾香、ふみ枝を中心としたハードボイルドでもあり、鮫島の危機を書いたものでもあります。

綾香、ふみ枝と鮫島が当然対立し、事件は終わりに近づきます。
終わりに近づくに連れ、綾香の本性も分かってきます。

綾香とふみ枝の関係が徐々に変わってきます。
綾香は恐ろしい女です。


女性中心のハードボイルドという珍しい構成です。
毒猿とは全く正反対の話です。


他とは違うハードボイルドを読むことができます。
特に毒猿を読んでから、この話を読んで欲しいと思います。






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