大沢在昌 絆回廊 新宿鮫]







新宿鮫シリーズ第10作です。
9作は鮫島のライバル、仙田の話でしたが、この第10作は鮫島の上司で、良き理解者の桃井の話です。

9作以上に大事な話となっています。


鮫島には新宿署で2人だけ理解者がいます。
鑑識係の藪と上司の桃井です。

特に桃井とは同じ部署ということもあり、常に顔を合わせています。
普段は桃井だけが鮫島の理解者で、鮫島にとって無くてはならない存在です。


話は新宿鮫シリーズらしく、色々なものが絡み合っています。
桃井の話ということは最初の頃は分かりません。

後半でようやく、桃井の話であることが分かります。



ある大男が刑務所から出てきました。
その大男は拳銃を欲しがっています。

大男は殺人罪で22年間も刑務所にいましたが、出所してからもその考え、行動は変わりません。

再び犯罪を起こそうとします。


大男は、暴力団ではないので、簡単に拳銃は手に入りません。
しかし色々と手を回し、拳銃を手に入れようとします。


その途中で、暴力団、そして中国人グループが出てきます。
中国人グループは正確には残留孤児2世のグループです。

日本人でもあり、中国人でもある人間たちの集団です。
暴力団とはまた違います。

そのグループは「金石」(ジンシ)と言います。
このジンシが最後まで暴れます。


大男は何とか拳銃を手に入れようとしますが、その途中で、殺人を起こして行きます。
大男は目的を達成するためなら、手段を選びません。

まさに殺人鬼です。


大男には妻と息子がいます。
しかし妻は既に亡くなっており、息子とは22年間も会っていません。
その息子は25歳になりました。


妻は、中国からの留学生で、大男が逮捕された後は、ある警察官の計らいによって息子とともに中国に帰りました。

この出来事により、大男は復讐に燃えます。

大男は、妻と息子と離れ離れになってしまい、会うことができなくなりました。
警察官によって仲を引き裂かれたと思ったのです。

妻と息子を中国に返したその警察官に復讐を果たそうとします。


大男の勘違いとも言えるのですが、いずれにしても大男は妻と息子を中国に返した警察官を許しません。
その警察官を殺すために、拳銃を手に入れようとしています。


またジンシも事件を起こして行きます。
ジンシは暴力団以上に残忍で、平気で人を殺して行きます。


ジンシと大男は拳銃で繋がってきます。
仲間ではありません。


大男は常に単独行動で、どこにも所属していません。
しかしこの大男を22年間も待っている人物がいました。

大男の帰りを待ち、大男の代わりに中国にいる息子に手紙を出したりして、待っていました。
この人物と大男との絆が大事になります。


また、鮫島にも絆があります。
上司、桃井との絆もそうですが、恋人、晶との絆もありました。


この話では鮫島と晶の間が大きく揺れ動いて行きます。

晶は事件とは無関係ですが、鮫島を語る上で欠かせない人物です。
晶と鮫島が分かれるかもしれない、という展開になります。


晶は人気グループ「フーズハニイ」のリードボーカルですが、そのバンドのメンバーが薬物使用で逮捕されます。
それにより、グループ解散の危機に追い込まれます。

また晶の恋人は警察官であることは有名で、この2人の仲も注目を集めます。

晶は薬をやっていませんが、警察官の恋人としては印象が悪いです。
鮫島は警察を取るか、晶を取るか考えます。

鮫島と晶の絆、という話にも注目です。
そしてこの2人の関係に桃井も加わってきます。

桃井は鮫島と晶の関係をもちろん知っており、心配しています。
鮫島は良き上司、桃井に色々な面で助けられています。



さて話は、桃井中心に進んで行きます。
大男が復讐を果たそうとしている人物は、桃井だったのです。

桃井を殺すために拳銃を探し、そしてついに拳銃を手に入れます。
あとは桃井を殺すだけです。


桃井も鮫島も大男の狙いが桃井であることに気が付きます。
しかし桃井と鮫島は、大男を押さえに行きます。

つまり大男と桃井が戦うのです。

ハードボイルドらしい展開が待っていますが、桃井と大男の戦いだけではありませんでした。
大男を待っていた人物も戦いに加わってきます。



話は最後に大きな山を迎えます。
これは桃井の話です。

鮫島にとって非常に大事な人物が事件に巻き込まれます。


タイトルにある「絆」がよく分かる最後です。


桃井がどうなったのか、読んで確かめて下さい。
新宿鮫シリーズはこれで終わり、と思わせるような最後です。



なお、この話ですが、連載中に東日本大震災があり、大沢さんは書き続けるかどうか迷ったということです。
しかし書き続け、話は完成しました。

震災後、「絆」が強調されるようになり、タイトルにも「絆」が入っています。
この話は絆が常に中心です。


色々な人物の絆が話に絡んできます。
鮫島と桃井、鮫島と晶、大男と家族、大男と待っていた人物、こういう絆が中心となっています。
「絆」に注意しながら読んで行って下さい。


最後の最後は鮫島の絆ではありません。
大男の絆で終わります。
終わり方にも注目して下さい。







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