横山秀夫 陰の季節 







横山秀夫さんの第1作です。
5回松本清張賞受賞作です。

4つの短編が収められています。




陰の季節

本のタイトルにもなっている話です。
これはD県警の人事に関する話です。

人事を担当しているのは二渡(ふたわたり)真治警視です。
二渡は天下りの世話もしなければなりません。

尾坂部(おさかべ)道夫という天下ったOBに関する人事の話です。
この尾坂部は人事異動の時期になっても、今いるポストを辞めないと言います。

天下りも人事があり、一定の期間で退くことになっているのですが、尾坂部は今いる社団法人を辞めるつもりはありません。
尾坂部が辞めないと、そのポストが空かないので、次の人事に支障が出ます。

この尾坂部が辞めない理由が話の中心になります。

尾坂部はある理由があるので、そのポストを辞めません。
ある理由は予想外のものです。

尾坂部の真意を確かめようと二渡は動きますが、尾坂部の堅い気持ちは変わりません。
何があっても動きません。


尾坂部のことを二渡は調べました。


そうすると尾坂部には結婚を控えた娘がいることが分かりました。
この娘に何かありそうです。


実際、尾坂部は娘のことが理由で今いるポストを辞めないのです。
しかしこの理由が予想外のものです。


尾坂部の執念と言える理由で、尾坂部はポストを止めようとはしません。
天下り人事の大変さも分かる話です。


また横山ワールドがいきなり出ていると言える話です。
横山さんは警察小説の短編で有名で、本当に短編を書くのが上手いです。

この話も70ページほどなのですが、見事に話がまとまっています。
横山さんの短編を書く技術の凄さも堪能して欲しいと思います。




地の声

タレコミの話です。
ある日、D県警監察課に郵便が送られてきました。
その郵便はタレコミで、警察の不祥事を暴く内容でした。

このタレコミの真相を探るべく、D県警監察課監察官の新堂が動きます。

タレコミは内部の者がしたようです。

新堂は警察内部の者を疑いながら、タレコミの真相を探っていきます。


そこで怪しいことが起こってきますが、伏線です。
最後にはしっかりと結末が用意されています。

タレコミをしたのが誰で、何の目的だったのか、最後にはしっかりと分かります。

またタイトルの「地の声」は「天の声」の反対語として使われています。
タイトルの意味も読んで行けば分かります。



この話も横山さんらしく、しっかりとまとまっています。
短い話ですが、最後は逆転が待っています。




黒い線

似顔絵を描く、若い婦警の話です。
機動鑑識班の平野瑞穂がある日、無断欠勤をします。


平野はその前の日、犯人そっくりの似顔絵を書き、犯人逮捕に大きく貢献したばかりでした。


いきなりの無断欠勤に周囲は驚きます。
瑞穂がいきなり姿を消し、他の警察官が探しに出ます。

瑞穂の似顔絵の技術は見事で、犯人そっくりに絵を描くことができます。
瑞穂は期待の婦警でしたが、何の前触れもなくいなくなってしまいました。

瑞穂失踪の裏には、ある事実が隠されていました。


それは、前日の犯人逮捕の際に使われた似顔絵です。
その似顔絵が原因だったのです。

犯人そっくりの似顔絵が理由で瑞穂は姿を消しました。


この話では女性警察官の実情を知ることもできます。
横山さんの話では時々女性警察官が出てきます。

警察は男社会ですが、この話でその中にいる女性の存在、役割などを知ることができます。



瑞穂がいなくなった理由ですが、一体どんな理由だったのか、また瑞穂はどうなったのか
読んで確かめて下さい。







D県警警務部秘書課の課長補佐、柘植(つげ)正樹警部の話です。
柘植は議会対策を仕事にしています。

簡単に言えば議会で行われる答弁の準備です。
政治家の代わりに原稿を書くのが仕事です。


ある日、鵜飼(うかい)県議が一般質問で爆弾を投げる、という情報を得ます。
爆弾というのは県警に向けての厳しい質問で、どんな内容なのか予測不可能な質問のことです。

柘植は鵜飼の質問がどんな内容なのか、必死に探ります。
鵜飼の質問によっては県警が大きなダメージを受けます。

柘植は一般質問が行われるまで、鵜飼のその爆弾の内容を知ろうと直接鵜飼の所に出向きます。


しかし、もちろん鵜飼は質問内容を教えません。
一般質問で爆弾を投げるので、その前に爆弾の内容を教えることなどはしません。


柘植は焦ります。

焦りますが、一向に爆弾の内容は分かりません。


柘植は何とか爆弾の内容を知ろうと、最後の最後まで粘り、鵜飼のマンションまで押しかけます。

そこで鞄が出てきます。
この鞄が最後に大きな意味を持ってきます。


話を読んでいると、鞄は特に何もないようなのですが、最後の最後でその鞄が出てきます。


鵜飼の爆弾は何だったのか、また柘植はどうなったのか、そして鞄が持つ意味は何なのか、最後には全て分かります。
またこの話も警察人事の話と言えます。

横山さんの話で警察人事を知ることができます。
読んで確かめて下さい。







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