横山秀夫 半落ち 







映画にもなった話題作です。
横山さんらしく、短編のような形を取っている長編です。
それぞれ話が独立しているようで、全ての話が繋がっています。
横山ワールドを味わえる長編です。




志木和正の章



W県警本部捜査第一課の強行犯指導官の志木中心の話です。

連続少女暴行事件の捜査中に、梶警部がアルツハイマー病だった妻を殺して
自首してきたと連絡が入ります。

その梶の取り調べを志木が行うことになります。

梶は妻を殺した後、2日間の空白があり自首してきました。
問題は、自首するまでの2日間です。

どこで何をしていたのかが問題になります。


またこの話でも、警察内の対立があります。
警察組織の難しさが分かります。

梶は妻を殺した後、東京、歌舞伎町へ行ったという話が出てきました。
これが極めて大きな話になって行きます。




佐瀬銛男(もりお)の章


W地方検察庁の佐瀬検事視点の話です。

佐瀬の元に、梶の自白調書が送られてきます。
佐瀬は読むなり、隠ぺいがあると見抜きます。

佐瀬も梶の取り調べをします。

そこでもやはり空白の2日間が問題になります。


梶は決して口を割りません。
空白の2日間どこで何をしていたのか話しません。

また梶は今49歳で、50歳になったら死ぬかもしれない、という噂もあります。


この章では、警察と検察の対立も描かれています。
検察官の立場も分かるようになっています。




中尾洋平の章


東洋新聞社の中尾洋平記者の話です。
ここでもやはり記者が出てきました。

中尾はある日偶然、伊予警務部長と佐瀬検事の言い合いを聞きます。
警察と検察が対立しているのです。

それは梶の自白調書を巡ってです。
梶の自白調書はねつ造である、ということを中尾は偶然耳にします。


中尾の取材行動が話の中心です。
中尾は取材を進めながら、梶が妻を殺した後、歌舞伎町に行っていた、という情報を得ます。

しかし簡単には記事にできません。
確認が必要です。


中尾は色々な人物と接触しますが、その中で、警察、検察の組織との戦いがあります。
警察と新聞社、検察と新聞社、警察と検察、という対立の中で、中尾は取材を進めます。



そして、梶の歌舞伎町行きの記事を書くかどうか決断する時が来ます。
梶の空白の2日間を埋める記事です。


また、中尾の東洋新聞社内での立場も重要になります。
中尾は中途採用で、新卒採用ではありません。
この中途採用という立場が、中尾を苦しい立場に追い込んでいます。

中尾はどういう行動を取ったのか、読んで行って下さい。





植村学の章


佐瀬銛男の知り合いである植村学弁護士の話です。

植村の元に、梶の義理の姉から依頼が来ます。
梶には、身内と呼べる人物は義理の姉しかいません。
その義理の姉が、植村の所に行き、梶と連絡を取りたいと言います。

梶には何か隠していることがあり、義理の姉もその隠し事を知っているようです。

この話では植村と佐瀬の関係、また植村の過去、植村の現在など、弁護士という仕事が
どんなものか分かるようになっています。



植村は梶と同い年です。
また植村の親も年老いて、介護を必要としています。


植村は梶を理解しようとします。
植村は梶の弁護を引き受け、梶の元に面会に行きます。

梶と植村のやり取りを読んで下さい。




藤林圭吾の章


藤林は37歳の特例判事補で、梶の裁判の審理に当たっています。
梶の裁判では主任を務め、判決文を起草することになっています。

この章では、梶の裁判が進んで行きます。
裁判官の視点で、裁判が進んで行きます。


藤林には元裁判官の父がいます。
その父はアルツハイマー型老年痴呆で、介護が必要です。

藤林の妻が、父の介護をしています。
妻は懸命に介護をしていますが、苦労の連続です。


藤林は自分の親の介護と、梶の介護を重ね合わせて行きます。

藤林は判決文を作成する際、妻に意見を求めます。
妻はまさに介護をしている最中で、梶の気持ちが分かる立場とも言えます。

そこで妻、そして父の考えを知ります。
介護の現実が分かるとも言えます。


この話は裁判というよりも、介護についての話と言えます。


最後には梶の刑が決まります。
藤林が梶の刑を決めました。




古河誠司の章


M刑務所の古河刑務官の話です。
古河は定年を翌年に控えている刑務官です。

古河が働く刑務所に梶がやって来ました。
梶は実刑になったのです。

古河の視点で話が進みますが、ここでは刑務官の立場、刑務所改革などの話が出てきます。


刑務所は厳しいところですが、それは刑務官にも当てはまります。
刑務官は常に厳しさを求められます。

また刑務官は受刑者を管理する立場ですが、実際には支配する立場になります。
この支配が何とも言えない快感を産みます。


支配欲があるのが刑務官です。


さて、梶はM刑務所に入ったのですが、自殺の可能性があるので常に監視されています。
梶は50歳になったら自殺すると見られ、刑務所内でも常に監視が続けられています。


しかし梶は50歳の誕生日を迎えても自殺しませんでした。


梶はその後、刑務所内で問題なく過ごし、時間が過ぎて行きます。
このまま何事もなく終わるはずはありませんが、ある時、県警捜査一課の警視、志木和正から連絡があり
梶を取り調べたいと言ってきます。


そこで志木と古河が事前に会い、話を強引にまとめて行きます。
志木はある目的を持って梶に会いに行きます。

取り調べなどではありませんでした。
取り調べは表面上の理由で、実際は空白の2日間を埋める事実を持って行きます。



梶がなぜ50歳の誕生日にこだわったのか、またなぜ妻を殺した後、歌舞伎町に行ったのか、最後の最後で分かります。


最後の最後は、梶の亡くなった息子が関係してきます。
梶は13歳の息子を急性骨髄性白血病で亡くします。

この息子の死が梶の空白の2日間に繋がって来ます。
梶の空白の2日間は何だったのか、最後まで読んで下さい。




この話は最初から最後まで空白の2日間の話です。

そこには介護が大きく絡んできます。
また息子の病気も関係してきます。

さらには介護現場の大変さが分かる話とも言えます。








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