大沢在昌 灰夜 新宿鮫Z







新宿鮫シリーズ第7作です。
しかし発表順で言えば第8作です。
話の順で第7作ということになります。


この話は、新宿鮫らしくないと言えます。
何せ話は新宿では全くなく、遠く離れた鹿児島(推測)で進みます。


警察大学校で同期だった故宮本の7回忌に出るため、鮫島は宮本の故郷、九州の南部の県に向かいます。


本にはどこにも「鹿児島」とは出て来ていませんが、九州で南国となると鹿児島となります。
しかも鹿児島をほのめかすような描写が普通に出てくるので、鹿児島と容易に推測できます。

例えば

「ふたつの半島が左右にまるでカニのハサミのように南の海に向けつきでている」

とあります。


これは薩摩半島と大隅半島であると簡単に分かります。
鹿児島とは一度も出てこないのですが、鹿児島での話となっています。


故宮本警視の7回忌に出た鮫島はそこで、宮本の友人と出会います。
古山(こやま)と木藤(きとう)という2人です。


この2人との出会いから、鮫島は事件に巻き込まれます。



この話では、九州の暴力団、覚せい剤、北朝鮮、工作員、麻薬取締官、など新宿鮫シリーズらしい話が出てきます。

かなり色々な話が出てくるので混乱してきます。
丁寧に読み進めて行って下さい。


話の中心は宮本と言えます。
宮本は自殺をするのですが、自殺する前に遺書を鮫島に預けようとします。

鮫島は断りましたが、宮本は
鮫島に郵送で遺書を送り付けます。


そして鮫島はその後、その遺書を持ち続けます。

宮本の遺書には公安二課の秘密が書かれており、その遺書を奪おうとして、鮫島に色々なところから圧力がかけられます。
鮫島は圧力に屈することなく、遺書を持ち続け、警察も辞めません。


また鮫島はこの遺書に苦しめられていることが分かります。
この遺書を持っていることで、鮫島は余計に苦しくなります。


鮫島と宮本は決して親友などではなかったのですが、鮫島は宮本の遺書を持ち続けます。
鮫島を語る上で宮本の話は非常に大事になります。

鮫島を深く知ることが出来る話です。




話は宮本の7回忌から思わぬ方向に進んで行きます。


新宿鮫シリーズですが、鹿児島で話は進み、新宿鮫のレギュラー陣は出てきません。
鮫島は一人で活動します。


新宿署の鮫島なので、鹿児島では捜査権はありません。
しかしそこは鮫島です。


鮫島は事件の解決に乗り出し、ハードボイルドらしい展開が待っています。


鮫島はいきなり拉致、監禁されます。
そこから話は始まり、鮫島を拉致、監禁した人物、組織へと話は繋がってきます。



福岡と鹿児島の暴力団の関係、覚せい剤を追っている麻薬取締官の寺澤、また鮫島を尾行している警察
北朝鮮からやって来た工作員、宮本の友人である古山、木藤の存在とその正体、古山の妹と古山と繋がりのある女性
そして上原という悪に染まっている刑事



こういうものが絡み合ってきます。



既に話が複雑に絡んでいることが分かると思いますが、本当に色々な話が出てきます。丁寧に読んで行って下さい。


話は古山、木藤という宮本の友人が中心と言えます。

古山、木藤はそれぞれ裏というか、本当の姿があります。

また古山と木藤は仲間ではありません。


さらに存在が大きいのが、刑事の上原です。

上原は警察ですが、暴力団とつながりが深く、腐った警察として描かれています。
上原は最後の最後まで鮫島と敵対します。


この話では工作員が出て来ることもあり、結構派手な場面があります。
また工作員がいることで、一層ハードボイルドらしくなっています。


誰と誰が敵で、誰と誰がどうなっているのか分かりにくい場面もあります。
鮫島が一人で動いていることもあり、どうなっているのか複雑ですが、上原という刑事は本当に悪に染まっています。


また北朝鮮の工作員は、最初は影が薄いですが、途中から工作員らしいことをします。
命知らずの行動に出て、豪快なことをして行きます。



この話は鹿児島の暴力団、警察という話になると言えますが、しかし実際は鮫島と宮本の話で
宮本の過去、宮本という人間が分かる話と言えます。



新宿鮫シリーズでは宮本の存在は大事です。
しかし宮本の詳しい話はこれまでありませんでした。


この「灰夜」で初めて宮本の詳しい話が出てきました。
新宿鮫シリーズを深く理解するためには、この灰夜は欠かせません。



鮫島と宮本の関係、宮本という人物、そして宮本の遺書、という大事な内容をしっかりと読んで行って下さい。







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