横山秀夫 第三の時効







F県警強行犯シリーズです。
短編集というよりも連作短編集という感じです。

強行犯という組織の対立が中心に描かれています。




沈黙のアリバイ


強行犯捜査一係、班長の朽木泰正が中心の話です。

湯本直也という犯人をこの一班が取り調べをし、裁判が間もなく始まります。
その裁判を傍聴するという話ですが、その裁判で予想外の出来事が起こります。


湯本は前科があり、今回は殺人を犯し、しかも取り調べでは自白しました。
裁判はすんなり終わり、刑も簡単に決まるだろうと思われていましたが、湯本は裁判で無実だと言い
アリバイを主張しました。


湯本が言うアリバイとは、事件があった時、女のマンションに居た、というものです。
このアリバイが成立するかどうかですが、またなぜ湯本が裁判までこのアリバイを黙っていたのか
ということも大事になります。



いきなり出たアリバイに警察は慌てます。
しかしこのアリバイ主張には裏がありました。

そして警察官もこのアリバイに絡んでいました。


最後はアリバイも、湯本の犯罪も全て分かりますが、この話は朽木の話です。
一班の班長、朽木の凄さを読んで下さい。




第三の時効


本のタイトルにもなっている話です。
この話がこの本の中で一番印象に残りました。


ここでは強行犯捜査二係、二班の班長楠見が出てきます。
楠見は元公安刑事で、部下思いではありません。
部下と対立しています。

楠見は「冷血」として知られています。
その冷血さが最後に出ます。


ある殺人事件の時効が迫っています。
犯人は約15年逃走していますが、途中1週間だけ台湾に行っているので、その分
時効期間が延長されています。


事件発生から15年ちょうどが第1の時効、15年と1週間後が第2の時効で、第2の時効を迎えた時が
本当の時効になります。



しかし第3の時効が存在するのです。
3の時効はウルトラCとも言えるものです。


この話は楠見という刑事の冷血さ、また正確さ、すごさが分かる話です。


この殺人事件には誰もが知らない裏がありました。

楠見だけがその裏を知っていました。

そして楠見は第3の時効を仕掛けました。


その用意周到さは見事と言うしかないのですが、楠見のしたことは、警察内でも批判を
買うものとなっています。


警察を敵に回すくらいの冷血さを持っている二班班長の楠見が仕掛けた
3の時効を読んで下さい。


横山さんらしく、本当に話がまとまっています。
一冊の本になっても不思議ではないくらい、完成度が高いです。




囚人のジレンマ


捜査第一課長の田畑昭信の話です。

田畑は、強行犯捜査係の上司に当たります。

一班の朽木、二班の楠見、三班の村瀬、と個性が強烈な部下がいますが、その部下たちを
まとめる立場が田畑です。



同時に3件の殺人事件があり、捜査第一課長は大忙しです。
もちろん強行犯捜査係が動いています。


またここでは真木という新聞記者が出てきます。
横山さんは元新聞記者なので、新聞記者が多くの話で出てきます。

そしてこの話では、この真木という記者が結構大事になって来ます。


3件の殺人事件の解決の話なのですが、実は、伴内という三班のベテラン取調官の話でもあります。
伴内は間もなく定年で、これが最後の事件と見られています。
そこで解決が難しい事件を担当します。


この伴内に花を持たせようと、強行犯捜査係が動きます。
そしてその間に新聞記者の真木が入って来ます。

その事実を田畑は最後に気付きます。

どんな動きがあるのかは、読んで行って下さい。
少し感動する話です。





密室の抜け穴


犯人を取り逃がした、という話です。
東出裕文警部補が中心です。


東出は三班の班長代理を務めています。
村瀬が病気で倒れたため、代理を務めているのですが、その村瀬が復帰します。
村瀬は一過性脳虚血発作を繰り返し、脳梗塞に見舞われ、倒れました。

その村瀬が、大した後遺症もなく復帰してきました。


話は、村瀬が倒れていた時のものですが、東出が班長代理をしていた時、見張っていたマンションから
犯人を取り逃がしてしまいました。


どうしてこんなことになったのか、会議が開かれ、原因が追究されて行きます。


これは密室の抜け穴というタイトルですが、深い意味があります。
マンションは密室ではありません。
しかしタイトルは密室です。

ある意味、復帰した村瀬が活躍します。


犯人を取り逃がした裏にはある人物が絡んでいました。
その人物をあぶり出すため、この会議が開かれていました。

密室の意味は最後に分かります。
村瀬のすごさも分かります。




ペルソナの微笑


朽木班長率いる一般の最年少、27歳の八代勲が中心の話です。

ある時、青酸カリが使われた事件が発生します。
その事件を八代が捜査します。


青酸カリ事件は実は13年前にも起こっていました。
その事件と今回の事件の関連性はあるのか、ないのか、ということが大事になります。


そしてこの八代には過去がありました。
八代の過去とこの事件が繋がります。


13年前の事件は子供を使ったものでした。
今回の手口はどうなのか、ということですが、八代はすぐ容疑者をとらえ、犯人だと見抜きます。

そして手口も見抜いていました。

13年前と今回の事件が繋がっていたのです。
どう繋がっていたのか、ということが大事ですが、「ペルソナの微笑」というタイトルの意味も
読んで行けば分かります。


「ペルソナの微笑」は最後には崩れます。




モノクロームの反転


一家
3人殺しが発生します。
この事件を一班と三班が捜査します。

もちろん一班と三班は対立しながら、捜査をすることになります。
一班は朽木が、三班は村瀬が率い、同時に捜査を行います。


一班と三班どちらが事件を解決するか、ということですが、決め手となるのは目撃証言です。

事件があった向かいの家に住む、安田明久という専門学校生が車を見たと言います。
安田は、車は白だったと言います。

そこで警察は怪しい人物で、白い車の所有者を探して行きますが、この目撃証言の信憑性が
最後には重要になります。



白い車を見たという証言は嘘ではなかったのですが、本当に白い車かどうかが大事になります。

事件の解決には人間は色をどう区別するか、という問題がありました。


最後には逆転が待っています。
最後の逆転を読んで下さい。







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